Productつくるひと つくるところ

「人」がわかると商品もわかる。コープの商品に携わる“中の人”をとおして想いを届けます。

From 北海道・音更町 大牧農場のお仕事流儀

From 北海道・音更町大牧農場のお仕事流儀

戦後の原生林開拓から未来へつなぐ
持続可能な農業の取り組み

2023.03.01

コープきんき産直商品
「北海道の雪室貯蔵 北海こがね」

※お取り扱いは生協によって異なります。

広大な北海道・十勝平野のほぼ中央に位置する「音更(おとふけ)町」。
このあたり一帯は、湿性と乾性の火山灰土壌という、二通りの土の性質を持つ平坦な農地が、どこまでも広がっています。

十勝の冬は積雪が約50㎝、最低気温はマイナス10度を下回る寒さ。夏は寒暖差が激しく、そのおかげで作物に栄養分が多く蓄えられ、おいしい作物がうまれます。
今では農産物の一大生産地になった十勝の音更町にある大牧農場ではじゃがいも・小麦・小豆・大豆などを生産しています。

コープきんき産直商品「北海道の雪室貯蔵 北海こがね」

コープきんきの産直商品「北海道の雪室貯蔵北海こがね」はこの大牧農場で作られています。
糖度が高く濃厚なので、シンプルな"塩ゆで"が本来の味を楽しめるとのこと。
バターを少~し垂らすと、これぞ本場のじゃがバター!自慢のじゃがいもです。

そんな大牧農場ですが、第二次世界大戦後の農地開拓は非常に困難なものだったといいます。
今回は、原生林の開拓から始めた先代の物語と今の農場のお話を、大牧農場の会長 五十川勝美さんと、代表取締役 宮田真さんに伺いました。

INTERVIEW

戦後の壮絶な農地開拓

INTERVIEW

大牧農場会長 五十川勝美さん

ー 大牧農場のはじまりを教えてください

第二次世界大戦後の昭和25年~30年、中国や樺太から故郷に引き揚げてきた人や移住した人が原生林を開拓しはじめたことがきっかけです。

広大な原生林の大木を1本ずつ切り倒し、根っこを掘り起こし、運び出す危険な作業の毎日。“ヤチボウズ”と言われる「スゲ」の成長したものを1つずつ鍬で掘り起こして、平坦な土地を広げていく…といった地道でたいへんな苦労を重ねてきたと聞いています。

また、然別湖(しかりべつこ)からの水脈(地下水)が豊富な一方で、排水性は悪く湿害が発生しやすい土壌でした。湿害は農作物の生育不良を引き起こし、降雨後のぬかるんだ土地では重機が活躍できない…。営農には非常に厳しい環境でしたが、それでも先代たちは粘り強く向き合い、調査・研究を続けてきました。この地を切り開いてくれた先代達へ感謝し、子から孫へと継続していける農業を、私たちは目指さねばなりません。

悩みぬいた湿害対策

悩みぬいた湿害対策

ー 湿害はどのようにして乗り越えられましたか?

湿害が発生しやすい土壌は地温が上がらず、生育不良を引き起こします。二代目の私(五十川氏)は自治体に掛け合い、「暗渠(あんきょ)」を埋設して地下水対策をはじめましたが、当初の暗渠はたった数年で使い物にならなくなりました。
※暗渠 (あんきょ)/地下に埋設したり蓋をしたりする水路。

「長期間使用できる暗渠を施工し、基盤整備を行わなければ、二代先・三代先まで持続する営農は不可能」と考え、模索し続けました。
その後、地下4mに埋設する「深層暗渠」を開発し、これがとても効果的でした。排水性と通気性の改善、地温の上昇により、収量性・品質が大幅にあがりました。農地も拡大して作業効率も向上。“ただ作物を生産する”ことに多大な労力を費やしていた状況から好転し、減化学農薬・減化学肥料を実現することによって持続的な農業の取り組みを始められるようになりました。

良質なたい肥と農薬削減

良質なたい肥と農薬削減

ー 持続的な農業の取り組みについて教えてください

まず、土づくりには良質なたい肥が欠かせません。
たい肥を購入する農家もありますが、大牧農場では初代のころから近隣の畜産業者から鶏糞や牛糞をもらい、農家からは選別クズや米ぬかをもらって「自家製たい肥」を生産してきました。
良質な自家製たい肥を投入することで有益な菌や微生物を土の中に確保でき、農薬に頼りすぎずにバランスのいい作物を育てることができます。

平成10年には、約1500坪の自家たい肥センターを建設しました。屋根付き・コンクリート敷きのたい肥場は、未熟たい肥や窒素分の流出を防ぎ、土壌や水質の汚染を防いでいます。
現在も近隣農家や企業と契約し、良質なたい肥原料を集めています。たい肥の主な原料としては、バークたい肥、鶏糞、麦稈(ばっかん)たい肥、豆殻などですが、これだけのたい肥原料をすべて近隣から集めることができるのは大変恵まれています。
自分たちの農場で出たものも加えて、地域内での有機物の循環を心がけています。

農薬削減の取り組み

農薬削減の取り組み

ー 自家製たい肥を利用する以外に取り組まれていることはありますか?

例えば「ばれいしょ」は、いもにしっかりと栄養分を行きわたらせておいしくするために、育ちきった茎が枯れるのを待つのですが、その際に植物生育調整剤は使用しません。自然に枯れるのを待って、黄化したらチョッパーで刈り取ります。また雑草の除去には除草剤を使用せず、精密機械や手作業で除草をおこなっています。
ばれいしょ、大豆、小豆の一部圃(ほ)場が特別栽培基準以上の農薬削減率です。
(※栽培期間中農薬使用回数0回~地域慣行基準比5割減以上)
安全安心な農作物をつくるため、農薬使用回数は出来る限り削減することを心がけています。

よりよい品質を目指して

よりよい品質を目指して

ー じゃがいもの品質について、大牧農場のこだわりがあればお聞かせください

ひとつは、じゃがいもの「風乾作業」を行っていることです。
収穫後、表面が乾いていないじゃがいもをそのまま倉庫に入れると、表面に汗をかいて呼吸ができなくなり、傷みや腐敗、病気の原因になります。
大牧農場では収穫してすぐ、じゃがいもを入れたコンテナをブルーシートで包み、機械を使って風を通し、表面をしっかり乾かします。
風乾作業をおこなうことで長期間貯蔵しても品質を保つことができます。

よりよい品質を目指して

平成15年頃には、じゃがいもの中心に空洞ができる現象が多発したことがありました。気温上昇が原因だったのですが、私たちはいち早く光センサーを導入し、空洞のあるじゃがいもをはじく対策を行ってきました。十勝でも気候の変動に伴い、こうした工夫が必要になってきたのです。

食品ロスへの取り組み

ロスへの取り組み

大牧農場代表取締役 宮田真さん

ー はじかれたじゃがいもはどうなりますか?

センサーではじかれたじゃがいもは規格外品となり、正規品として出荷ができません。それでも無駄にしないために、加工用やでんぷんといった、業務用として加工業者に販売し、食品ロス削減に取り組んでいます。

そして未来へつながる農業へ

そして未来へつながる農業へ

ー 未来に向けて、今の課題はありますか

やはり昨今の異常気象です。
今年(令和4年)初めて、雹(ひょう)被害に遭いました。また、今までなら雨が少ないはずの時期に突然豪雨が起こるなど、季節のサイクルに乗せた作業が難しくなっています。ほんとうにやりづらい環境になってしまった!前例も無いので、植え方の工夫等を模索しながら対応しています。

そして人手不足・後継者不足です
異常気象やオーガニックの対応をしたいところなのですが、人手不足が追い打ちをかけ、なかなか対応ができないことが課題です。農家の高齢化や若年層の農業離れ、後継者がいない土地を請け負って生産しているところもあります。
このままでは農家が激減するのではないかと予測しています。これは大きな社会問題といって過言ではないと思います。

そして未来へつながる農業へ

更に、異常気象対策や燃料などの諸経費の高騰もです。日本の市場は「販売価格ありき」なので、農家の家計はますます厳しい状況に置かれています。
収穫量は天候被害で大きく変動しますし、異常気象は防ぎようがありません。
国内トップクラスの生産量を誇る北海道ですら、今後の農家経営を守ることができないのではないかと危惧しています。農家を守らなければ、消費者の食生活を守ることもできないと思っています。
そんな中、生協を紹介してもらった縁で「産直提携」していただきました。生協とお取り引きができることは農家を守ることにつながりますし、一種のブランドにもなると考えています。安全安心を求めている組合員さまに精一杯応え、ご利用を続けていただき、持続可能な農業を実現できるように取り組んでいきたいです。

※商品情報・役職等は取材当時のものとなります。

編集後記

  • 編集後記
  • 編集後記

    村橋農場三代目 村橋美学さん

会長の五十川さん、代表の宮田さん、貴重なお話をありがとうございました。
現在は、五十川さんの息子さん、賢治さんが「イソカワファーム」三代目を継がれており、同じ大牧農場の、「樫木農場」「村橋農場」も三代目の方々が活躍されています。

ほかにも協力農家が4戸あり、おいしい作物づくりに励んでおられます。
十勝の広大な土地で丁寧に育てられた、
コープきんき産直のじゃがいも、
「北海道の雪室貯蔵北海こがね」をぜひご賞味ください。

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