Productつくるひと つくるところ

「人」がわかると商品もわかる。コープの商品に携わる“中の人”をとおして想いを届けます。

From 京都市 小川珈琲のお仕事流儀

From 京都市小川珈琲のお仕事流儀

コーヒーの未来、
コーヒーのその先へ

2023.03.16

コープのオリジナルコーヒーといえば、
おなじみ「小川珈琲」

今から約40年前(1982年)、京都生協のプライベートブランド商品を開発して以来、コープきんき会員7生協、どの生協とも親交の深い、京都の名門「小川珈琲」(本店:京都市右京区)。
2003年のコープきんき設立時には、新たに共同開発商品として「CO・OPマイルドブレンド(粉)」を代表とするレギュラーコーヒーシリーズを開発。今も主力商品として人気の高い商品です。

2022年に創業70周年を迎えた小川珈琲は、業界でもいち早く有機栽培のコーヒーづくりに取り組み、コーヒーを通したサステナブルな活動など、様々な分野の課題解決を目指しています。また同年には、産業の振興、社会福祉の増進、公共事業等に優れた業績をあげた人に授与される藍綬褒章(らんじゅほうしょう)が、全日本コーヒー商工組合連合会副会長で小川珈琲代表取締役社長の小川秀明氏に贈られました。


「コーヒー文化を守って未来につなげていくため、私たちは何をすべきか。それを意識しながら活動しています」。
そう話すのは常務取締役の宇田吉範さん。年間およそ100日におよび、世界のコーヒー産地を飛び回っています。
「よりおいしいコーヒーを安定してお届けし続けるために、まず生産者と良好な関係を作っていくことが大切です。そして私たちは創業から70年を迎え、コーヒーに関しては経験も知識もありますが、そこにあぐらをかかず、日々『コーヒー』と向き合い、研究を重ねていくことを大切にしています。また、“おいしい”だけではなく『情緒的価値』を想像しながらお届けできたらと常々考えています。コーヒーの抱える問題、そして新しい価値を共に考え、その先にいる組合員さんにしっかり新しい価値を提供していけるよう、頑張っていきたいと考えています」。

常務取締役 宇田吉範さん

「コーヒー文化を守って未来につなげたい」約18ヵ国のコーヒー産地を飛び回る、常務取締役 宇田吉範さん

約18ヵ国500農園 国際的な交流から
見出した一つの農園

小川珈琲と取引のある海外農園は、実に約18ヵ国・500農園におよびます。それぞれ良いパートナーシップを築き続けていますが、その中でも特に関係が深い農園があります。

ブラジル・セラード地区にある「ダテーラ農園」です。
ダテーラ農園は、大量のコーヒーを生産するブラジルにおいて、良質なコーヒー作りと持続可能な栽培に先進的に取り組む農園です。精度の高いコーヒー豆の栽培はもちろん、安定的な品質のコーヒーを長く届けていくこと、そして働く人にとって働きやすく、なおかつ自然を守りながら長く農園を続けることができたら。そのような想いをもって1987年に開設されました。2003年、ブラジルで最初にレインフォレスト・アライアンス認証を取得した農園でもあります。

「500農園の中で、今最も関係が深いのがダテーラです。ダテーラの豆と出会ったのは2008年のバリスタ競技『ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ』でした。我々のサポートをしていたバリスタが過去の大会で優勝した時に使用していたということを聞き、まず競技用として、2009年に初めてダテーラからコーヒーを買ったのですが、それを機にずっとお付き合いをさせていただいています」(宇田さん)。

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今、コープきんきでダテーラ農園の豆を使った商品はありません。しかし今年、コープきんき設立20周年を記念して希少なダテーラ農園の豆を使ったオリジナル商品を一緒に作っていこう!ということになったのです。
そこには2015年から始まった、産地×小川珈琲の大きな共同プロジェクトも影響しています。

老舗名門・小川珈琲が信頼した
「ダテーラ農園」とは

ダテーラ農園

2800ヘクタールのコーヒー農園と3000ヘクタールの自然保護区域をそれぞれ持つ、広大なダテーラ農園。農園には何百万本というコーヒーの木が植えられていますが、苗木からすべて自分たちの手で作り、それを1つ1つ手で植えるところから始まっています。おいしいコーヒーを届けるために実験的なチャレンジや研究を数多く行い、品種・収穫時期・熟度・精選・乾燥方法など、何年もかけて多彩な組み合わせを試し、コーヒーの味に幅をつけています。

コーヒーの生豆

「一方で包装にも注意を払わなければなりません。コーヒーの生豆が日本に入るまで船便で最大60日間ほど。せっかくいい状態に仕上げたコーヒーが輸送途中に温度や湿度で劣化してしまうのです。その影響を避けるための研究が、ダテーラ開発の「ペンタ・パック®」。通常、生豆は麻袋で運ばれますが、ダテーラの豆は真空状態で輸送。品質を長期間保つことができ、国際特許を取得しています。世界に先駆け、20年程前からこのような取り組みをおこなっているのもダテーラ農園なのです。
ほかにも、苗木の前段階である品種改良の研究も重ね、コーヒー2050年問題といわれる温暖化、気候変動などの問題が起きても作り続けられるよう、持続的な生産を目指しています。

共同プロジェクト・ダテーラ農園との
「PLOT PROJECT 」

2015年、そんなダテーラ農園との共同企画である「 PLOT PROJECT 」が始まりました。プロジェクトの専用区画で収穫されたコーヒーチェリー(果実)をどのように精選・乾燥させるか、これをすべて小川珈琲がプロデュースするという共同プロジェクトです。貴重な企画の一翼に小川珈琲が選ばれたいきさつ、そしてダテーラコーヒーの味わいと特徴について、生産部部長の小川晃司さん、珈琲鑑定士の大浦智史さん、そして14年にわたりダテーラ農園のコーヒーを小川珈琲に仕入れている総合商社の兼松株式会社江藤雄介さんにお話を伺っています。

  • OGAWA・PLOT区画
  • コーヒーチェリー(果実)

(兼松/江藤さん)
「2003年から日本の総代理店としてダテーラ農園から輸入をはじめています。当時、これからは国際相場にだけ振り回されるコーヒーではなく、未来永劫続けられるコーヒーをやりたい、スペシャルティやサステナブルといった価値のあるコーヒーをやっていきたいという想いをずっと持っていました。そんな折、ダテーラ農園がブラジルで最初にレインフォレスト・アライアンス認証をとったというニュースを聞きつけ直接農園に行き、ここのコーヒーを強く勧めていきたいという想いになったことが始まりです」。

兼松株式会社 江藤さん

「未来永劫続けられるコーヒーを扱っていきたい」兼松株式会社 江藤さん

(生産部部長/小川さん)
「小川珈琲は常においしいコーヒーを求めて、コーヒー豆を選び続けてきました。2000年代にはコーヒー生産国を訪れる機会を増やして、私たちが選んでいるコーヒーがどのような環境で作られているのかを視察するようになりました。どういう環境で作られているのか、どういう人たちが作っているかを視察して、私たちの想いを伝え、相手の想いを聞き、共感できた人たちと関係性を築いていきました。ダテーラ農園もそうしたコーヒー農園の一つであり、長きに渡り良好な関係を続けています」。

生産部部長 小川さん

「コーヒーを通じて、どういった相乗効果や価値をお客様に作り出せるかに目を向けていきたい」 生産部部長の小川さん

(鑑定士/大浦さん)
「2000年くらいから、コーヒーを単に生産国や規格だけで選ぶのではなく、おいしいものを作る農園にフォーカスして正当に評価をしようという機運が高まり、小川珈琲でもその流れで、おいしいコーヒーを作る農園を選んでいこうと取り組んだ結果、ブラジルで厳選した農園の一つが、兼松さんと関係の深かったダテーラ農園だったんです」。

鑑定士 大浦さん

「コーヒーを面白いと思ってもらえて純粋に楽しく飲んでほしい。人の顔が見えるようなコーヒーが一番」鑑定士の大浦さん

ダテーラ農園に専用区画のある企業は
世界でたった2社

(江藤さん)
「ダテーラ農園も『自分たちが開発するだけでなく、実際の消費者が求めているものや、世界各国のコーヒー農園を訪れる専門家からの知見も取り入れた方が、より価値の高いコーヒーを作ることができるのでは』という想いに至りました。だったら2800ヘクタールの農園のうち一区画で採れたものを、彼らに自由にアレンジしてもらったらいいのでは…ということで、各国のコーヒー企業に声をかけていったのです。日本のパートナーならどこが良いかと相談を受け、小川珈琲さんしかいないと思ってお声かけしました。各国から特に知見が豊富と判断した企業2社をパートナーに選ぶのですが、そのうちの1社に小川珈琲さんが選ばれました。ダテーラ農園に専用区画があるのは世界に2社だけ。もう1社がフランスの「カフェ・ロミ」です。2015年のプロジェクト以来、1年も欠かすことなくお互いがアイデアを出し続け今に至っています」。

夕焼けとコーヒー

(大浦さん)
「農園で出来上がった生豆から、最終製品の味わいを設計するのが私の仕事ですが、コーヒーのポテンシャルを知ったうえで、お客様にキャラクターを明確に感じ取ってもらえるような焙煎度合にこだわります。ダテーラ農園ではいろんなコーヒーをつくっていますが、他のブラジルの豆と比べると風味がとても“クリーン”です。収穫する果実の熟度が高く、注意深く精選をしているので、その結果邪魔する風味が少なく、香りや風味の特徴がより明確にきれいに感じる事が出来ます。それが他のブラジルの豆とは一番違うところだと思います」。

鑑定士 大浦さん②

(小川さん)
「コープきんき様20周年の節目に、オリジナル商品開発という機会をいただいています。まだ設計前でコープきんき様と弊社営業部門で、これから解像度を高めていく段階ですが、毎年続いていく企画になるよう、納得できる商品を出したいと思っています。飲んでいただく組合員さんにも満足してもらい、次にまた買いたいと思ってもらえる企画にしたい、しなければばらないと思います。原料、価格、味わい、プロモーションなどこれから苦労していくと思いますが、ぜひご期待いただければと思います」。

コーヒーを焙煎

※商品情報・役職等は取材当時のものとなります。

編集後記

コープきんき、そして会員7生協ともそれぞれ長い歴史がある小川珈琲さん。おなじみのコーヒーでとても身近ですが、想いや取り組み、産地を深く知ることで「いつもの一杯」がより味わい深く感じられるのではないでしょうか。
新しく開発予定というダテーラ農園のコーヒーも気になるところ。いつデビューでどんな味わいなのか、今から本当に楽しみです。

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