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From千葉県香取郡多古町 多古町旬の味産直センター・<br>井原さんのお仕事流儀

From千葉県香取郡多古町多古町旬の味産直センター・
井原さんのお仕事流儀

もはやスイーツ! コープきんきの産直「あまゆう(べにはるか)」

2024.01.11

コープきんき産直商品 
あまゆう(べにはるか)

※お取り扱いは生協によって異なります。


「おいもさん」。
関西では「愛と親しみ」を込めて食品や料理に「さん」をつけることが多いですが(おかゆさん、など)、今回は老若男女に愛される秋冬の味覚の代表「おいもさん」を育てている農家さんを訪ねて、コープきんき産直商品「あまゆう」の産地・千葉県香取郡多古町に行ってきました。

INTERVIEW

コープきんき産直商品 あまゆう(べにはるか)

9月に訪問時。今年の酷暑に負けずしっかりと成長していました。

きてます!第4次焼きいもブーム

「今、時代は“ねっとり”ですよ」と、農事組合法人 多古町旬の味産直センター・専務の井原さん。「関西では徳島の“鳴門金時”いもが有名ですよね。さつまいもは昨今の“焼きいもブーム”で、トレンドが大きく昔からは変わってきました。ホクホク→ねっとり系にシフトしてきています」。そういえばスーパーで売っている焼きいもも「サクッと割れてホクホク甘い!」というより、「ねっとりあま~い」ものが増えたようです。井原さんによると、現在は「第4次焼きいもブーム」なんだそう。

  • 多古町旬の味産直センター専務 井原さん

  • 9月はまだ畑にしっかり葉が茂っていました

千葉・茨城など関東のさつまいもの産地は、火山灰の地層で有名な関東ローム層。火山灰のミネラルや栄養など豊かな自然の恵みでさつまいも他農作物の栽培に適した土地となり、現在は関東地方のさつまいもの一大産地となりました。
ここで、さつまいもの「品種」や「名前」について。日本には現在「さつまいも」は約30品種程度あるのですが、大きく分けると「ホクホク系」「しっとり系」に分かれます。ホクホク系には、きんきの私たちになじみの深い「鳴門金時」や石川県の「五郎島金時」、千葉・茨城県で栽培している「ベニアズマ」などがあります。

  • 左がシルクスイート 右があまゆう

  • 日本の代表的な品種について、教えていただきました

一方、今回ご紹介する「あまゆう」は、品種名を「べにはるか」といい、しっとり系の代表選手。他には絹のような滑らかな食感で人気の「シルクスイート」が有名ですね。「甘く優しいおいもです。食べている間にうっとりするような、そんなおいもを味わっていただきたいと名付けました。そんなスイートな名前を裏切らないよう、生産者も心血を注いで栽培を行っているんです。」と井原さん。
何かほっこりといい語感の「あまゆう」。そしてこれは“生協の産直”のおいもなので、生協でしか会えない「おいもさん」なのです。

生協との産直のとりくみ、きずなとなった「あまゆう」

「多古町 旬の味産直センター」は1987年に設立、現在116の農家さんとともに、地域で作った農作物を集荷、加工、パッキングして、取引先に出荷しています。「自分たちのくらしを自分たちで作りたい」という「自立・自律」の精神で、野菜セットの販売や宅配便での産直活動をスタートさせました。関東圏から生協とのお付き合いがはじまり、のちに関西圏では、コープしがから産直産地の提携をスタート。続いて、ならコープ、大阪いずみ市民生協との間で産直商品として「あまゆう(べにはるか)」の供給活動が始まりました。現在は40代の若手生産者も多く「さつまいもパワー」で地域を盛り上げていらっしゃるそうです。

後ろには出荷を待つ野菜。さつまいも以外にも多くの野菜・お米を取り扱います

「さつまいもの栽培って、昔は誰でもできるもんだと思われていたのですが、今はそうでもないんですよ。」と井原さん。生育が盛んな時に葉を虫に食害されると、さつまいもの肥大に影響が出るので、その場合は農薬で防除を行います。また「肥料やりも難しい。実の様子を見ながら肥料をやれる“きゅうり”“トマト”などと違い、苗を植えてマルチ(雑草をよけるための黒いカバー)を被せるとあとから追肥ができないですし、成長すると、葉が茂り土の中は見えません。吟味に吟味を重ねて最初の土づくり(肥料の量など)をしなくてはならないんです。」
「さらに、昨今の気候の極端な変動などもあり、昔は誰でも作れていた“ホクホク系”のいもを栽培するのが難しくなってきました。こちらでは「紅あずま」も生産していますが、技術的な難しさもあるため年々収量が減ってきています」。

ー 生産の現場がスタート地点ー

就農45年の「あまゆう生産者」玉井正吉さん宅にお邪魔しました。息子・春樹さんと一緒に約16ヘクタールの土地を営農し、その生産量は年間約320トンにまでになる、比較的規模の大きい生産者さんです。

広大な玉井さんのいも畑。ここはほんの一部です。

今年の作況はいかがでしたか?「今年は雨が少なくて暑かったから乾燥がひどくて大変だったけど、なんとかふんばれていいものができてるよ。ここからはいかにいい状態で貯蔵をしておけるかにかかるんだけどね」。玉井さん宅を始め各農家さんには、収穫をした産物を貯蔵する「貯蔵庫」があり、その中で湿度・温度を調節。貯蔵庫で約2か月出荷を待つ間にでんぷんが糖化され、おいしくなった頃合いを見て「多古町旬の味産直センター」へ出荷されます。収穫から貯蔵までのタイミングを計るのは各農家さんの腕の見せ所。玉井さんのお宅では、今年1棟の貯蔵庫を増築されました。
「もっといいものをいい状態でお届けするためなんですわ。」床はコンクリート、自動制御の温加湿装置もばっちりです。気候や時代の潮流の変化にも「やる」「対応する」意識をしっかりと持たれている玉井さん。日焼けしたお顔はとてもやわらかく、息子さんと一緒に作業をされているのでした。

  • 海外からの技能実習生さんによる、暑い中収穫作業。お疲れ様です。

  • 穏やかにお話される生産者・玉井正吉さん。

知りたい!「あまゆう」の甘さのヒミツ・ヒケツ

「このあまゆうの神髄はやはり“甘さ” 」と井原さん。「甘いメロンで糖度が20度いかないくらいだけど、このあまゆうはじっくり加熱すると最高40度くらいになることもあるんですよ。農産物“さつまいも”というよりもはや“スイーツ” ですね」。なるほど。しかしこの甘さはどうやって可能になるのでしょうか。
「植え付けも早めに行って、土の中でしっかり育てる。収穫してからも熟成させるために最低2か月以上はじっくり貯蔵。とにかくじっくりと育てる。そうしないとしっかり甘さがのらないんだよね。」と玉井さん。やはり簡単にはおいしいものは出来上がらないということなんですね。

  • 玉井春樹さんの大きな手からはみ出す
    おおきなあまゆう。

  • 手間はかかるけどおいしく食べてもらえることを
    想像しながら励んでいます!

最後に、一番気になる「あま~くおいしくなる焼き方」を井原さんに伺いました。
「さつまいもは、低温でじっくり焼くほど、甘みがしっかりと出るので、時間と調理器具のチョイスが重要。理想的なのは、裸のままオーブントースターや蒸し器で60~75分くらいじっくり焼く(蒸す)こと。」だそう。おお、これはちょっと気合が必要。
少し短縮したい方は、約45分加熱して、あとは予熱で仕上げるという方法でもOKだそう。逆にNGは?「楽だと思うのですが、“レンジ加熱”ではこの“あまゆう”の美味しさ・あまさを体験することはできません。ほんとうに美味しいものを食べるには、手間をかけるものですヨ」な、なるほど。ガンバリマス。

「いろいろみなさん忙しい日常を送っておられると思いますが、シンプルな焼きいもを食べるときこそ、じっくり食材に向き合って、食してみてはいかがでしょうか。そんな時にぴったりな「あまゆう」のご紹介でした。

※商品情報・役職等は取材当時のものとなります。

編集後記

さつまいもは「肥料をやりすぎると、葉(親)はイキイキするんだけど、実(子)に届かない。葉を枯らしていくことで世代交代を促して、子により栄養が行くように育てるんです。甘やかさない。極限の状態に。自分の力であま~く最大のパフォーマンスを発揮させるよう、厳しく育てていくそう。そんなおいもは、生産者の玉井さん親子の姿に重なったのでした。

大切な「あまゆう」を我が子のように厳しく育てたその先には、笑顔。

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