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From 徳島県美馬郡 小野製麺 小野貴也さんのお仕事の流儀

From 徳島県美馬郡小野製麺 小野貴也さんのお仕事の流儀

手延べの技と豊かな自然が育てた、伝統の味

2024.04.18

「手延半田めん」


つるりと口当たりのよいなめらかさ、ふわりと広がる小麦の風味。ほどよく歯ごたえのあるモチモチ食感に、スッキリとしたのどごし。「手延半田めん」は、口へ運ぶ瞬間からのどを通るまで、その風味と爽快感を堪能できる夏の人気商品です。毎年必ず購入するというファンは全国にいますが、製造しているのは徳島県美馬郡つるぎ町のみ、という特別感も魅力的。今回はその魅力をさらに探るため、3代に渡って手延べ製造を手がける小野製麺さんにうかがいました。

INTERVIEW

「手延半田めん」

一度食べると夏の食卓に欠かせなくなる半田めん。アレンジしやすく、温麺にして年中楽しむ人も

「うどんより細く、そうめんより太い」半田めん
ルーツは300年前の船頭さん

そもそも「半田めん」とは、「うどんより細く、そうめんより太い」麺。そうめんが直径1.3ミリ未満であるのに対して、半田めんは約1.4〜1.6ミリあり、麺一本一本の食感を、よりしっかり感じられる太さです。その太さゆえコシの強さが際立ち、そのおいしさが全国に知られるところとなりました。

誕生のルーツは300年前までさかのぼります。当時の淡路や鳴門の船頭が、仕事が少ない冬の時期に、奈良の三輪で得たそうめんづくりの技術を使い、自分たちが食べるそうめんを作り出したのが始まりなのだそう。それから現在に至るまで伝統的な製法と技術は受け継がれ、地元・阿波エリアで愛されてきた麺は、本来 “ひやむぎ”に分類される太さですが、つるぎ町(旧・半田町)で作られたものだけを「半田そうめん」「半田めん」といいます。

小野製麺代表取締役で2代目の小野健二さん(左)と、3代目・貴也さん。
貴也さんは、麺をはじめとした小麦製品を扱う卸売商社で流通などの経験を積んだ後、現在は職人の一人として毎日工場で製麺作業に携わっています。

原料は四国の雄大な自然が育む水と塩、
そして厳選した小麦粉だけ

「私も小さい頃から半田めんを食べて育ちました。もちろん今でも年中食べますし、まったく飽きないおいしさがあります」と話すのは、つるぎ町に本社工場を構える小野製麺有限会社の3代目、小野貴也さん。父の健二さんと共に、毎日全国に発送する「半田めん」の製造に携わり、職人として、また経営者としての経験を積んでいます。

本工場にほど近い第二工場は、山々と里山をのぞむ山頂に建ち、工場前の駐車場から辺りを見渡せば、つるぎ町の豊かな自然に包まれて「半田めん」が作られていることを肌で感じます。思わず深呼吸していると、「向こうに見えるのが、讃岐山脈、そしてこちらが四国山脈(山地)。その間に流れているのが吉野川です。「半田めん」で使われている水は、吉野川の伏流水なんですよ」と健二さん。
「原料は、小麦粉と吉野川の伏流水、鳴門の塩だけ。とてもシンプルだからこそ、厳しい目でしっかり選んでいます」。

小野製麺第二工場

高知県から徳島県を流れる吉野川。圧倒されるその雄大な川幅は、全国で2番目に大きい。つるぎ山からの冷たい風、麺を硬くさせない吉野川の軟水、そして生地を引き締める鳴門の塩と、麺作りに必要な阿波の恵みが揃う

生地を何度も重ね合わせる工程が
コシの強さを生み出す

1日4万食分の半田めんを製造するという工場は、毎日早朝3時から作業がスタート。
まず小麦の一大産地、オーストラリアが日本のために開発した麺用小麦粉と、国内産のものをブレンドし、そこに吉野川の伏流水、鳴門の塩を混ぜ合わせて練り込みます。小麦粉を安定させるため、工場内の室温は常に20〜22度、室度は65%。30分かけてじっくりと練り込んだら、麺を円状(平ら)に。

その後、円状の生地を幅12cm程度の麺帯にしておけに巻き込み熟成させます。熟成したら、今度は麺帯を3本合わせてロールに通し、1本の生地に。
「これを繰り返すことで、麺は最終的に12層にもなります。コシの強さやモチモチとした弾力は、この層があるからこそです」と小野貴也さん。

  • 工場内にどんどん作られていく生地。熟成させて麺帯を合わせる「いたぎ」という工程を経て「掛け巻き」へ

  • ヨリをかけながら細く延ばすことで、
    生地はさらに強くなる

  • 複雑な機械を通り、少しずつ延びていく生地

  • 八の字形に管に掛けられた生地。弾力の強さに驚く

12層にも重ねた麺帯を熟成させた後、今度は細く延ばしてヨリをかけます。同時にひまわり油を表面に塗ることで、生地がツヤを増し、なめらかに。この時点で柔らかい生地が機械を通るたびに細く延び、途中で切れないかと少しハラハラするのですが、麺帯をねじりながらヨリをかけ、2本の管に八の字形を描きながらあや掛けしていく「掛け巻き」の工程では、生地が力強く延ばされても決して切れることはありません。
5時間ほど寝かせたあとはまた延ばし、さらに2〜3時間ほど熟成。

「寝かせることで、小麦粉が持つグルテンが形成され、水分が均一に馴染むんです。この工程を繰り返すからこそ、半田めん特有のコシが出るんですよ」と貴也さん

「手延べ」であることへのこだわり。
吉野川の清流のように繊細で美しい線が生まれる

生地をしっかり熟成させたら、次は「はた」と呼ばれる道具に麺をかけ、職人が箸を使って均等になるよう麺をさばく「箸入れ」という工程に。麺を引き延ばしながら、一気に2メートルの長さにし、箸で一本一本ほぐすことで、なめらかな口当たりに。この作業を機械に頼らず人の手で行うことが、半田めんならではの繊細な口当たりに繋がります。

  • 箸入れ工程。職人さんの素早く迷いのない箸さばきは、しばし見惚れてしまう鮮やかさ

  • 箸入れをした「はた」は乾燥室へ。天井には自然の風を送り込むファンが回っています

乾燥室では、はた1台に対して1台程度の割合でファンが設置され、上から下へ、下から上へと自動で自然の風を送り込みます。2時間程度乾燥させたら翌朝まで寝かし、さらに6時間(!)をかけてゆっくりと乾燥。 「生地作りから出荷までは、大体3日程度かかります」。

麺の水分が13%以下になるまでしっかり乾燥させたら、製品の長さである19cmにカットします。その後の選別や袋詰めなどは、機械ではなく人が必ずチェックする、と小野さん。
「原料となる小麦粉は、職人が室温や湿度を微調整するくらい繊細なもの。また異物混入など絶対にあってはいけないので、必ず最後は人の手と目で厳しくチェックしているんです。ゆで検査、水分検査、金属探知機の検査をすべて合格した麺だけを結束、箱詰め・袋詰めします」

目視はとても大切にしている部分。金属探知機自体のチェックは、1日5回行うという徹底ぶりで、今まで品質のクレームはなし。

小野製麺でおいしい半田めん作りに携わる皆さん

「安心安全で喜んでいただける商品を提供し続け、ファンのお客様を増やしていく。それが食品会社として一番の喜びです」と小野貴也さん。

最後におすすめの食べ方を聞きました。健二さんは、「麺を味わって欲しいから、まずはつゆと薬味でぶっかけを食べて欲しいですね」。当日振る舞っていただいた半田めんには、薬味として錦糸卵としいたけの甘辛煮、レモンが添えられていました。
半田めんで育ったという貴也さんは、「納豆、長芋でネバネバ系をかけるのが好きですね。ぶっかけにレモンを絞ると、サッパリとして食欲がない暑い日も食べられます。ネギとミョウガ、刻み揚げもぜひ!」

小野製麺さんのホームページには、パスタ風、丼風とアレンジレシピが多数紹介されているので、ぜひ挑戦してみてください。

※商品情報・役職等は取材当時のものとなります。

編集後記

手延半田めんを初めて食べた時、麺の肌のなめらかさに思わずうなってしまいました。つるり、を超えて「とぅるり」と口に広がる爽快感が心地よく、箸が止まらなかったのを覚えています。徳島県の特定の地域だけで脈々と受け継がれてきた半田めんが、今ではさらに広く愛されているという物語は、ゆったりと流れる雄大な吉野川そのもののように感じました。

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