Productつくるひと つくるところ

「人」がわかると商品もわかる。コープの商品に携わる“中の人”をとおして想いを届けます。

From 宮城県塩釜市 ㈱渡會のお仕事流儀

From 宮城県塩釜市㈱渡會のお仕事流儀

魚屋のプライドをかけて
使命は手作りのおいしさを届けること

2024.05.30

株式会社渡會
「骨取り赤魚の煮付け(しょうゆ)」


「もっと手軽で誰もが食べやすいお魚があったらいいな」の声から誕生した「骨取り魚」シリーズは、いまや全国の組合員さんから絶大な人気を誇ります。
そんな人気シリーズの中から今回は「骨取り赤魚の煮付け(しょうゆ)」を手掛ける株式会社渡會(わたらい)を訪ね、おいしさの秘密を取材してきました。

INTERVIEW

株式会社渡會 「骨取り赤魚の煮付け(しょうゆ)」

レンジや湯煎で温めるだけで、おいしい煮付けができあがり。骨がないので子どもからお年寄りまで、誰もが楽しめる商品。赤魚の身がホクホク、甘辛い味付けでご飯が進みます。

老舗の目利きと世界中のネットワークを活かした仕入れ

宮城県仙台市と日本三景「松島」の間にある塩釜市は古くから漁業や交易の拠点として栄え、現在でも水産業が盛んなまち。この地で長きにわたり、世界の海からおいしい魚を食卓へ提供し続けているのが水産加工メーカーの渡會です。

塩釜工場にて。まずは自慢の骨取り赤魚冷凍フィレを遠藤常務に見せていただきました。

「おいしい商品を作るには良い魚を調達することから。もっともこだわっているのが仕入れです」と生き生きと話すのは、常務取締役の遠藤彰さん。
渡會は大正10年に塩釜で創業。平成30年頃までは、世界中に自社の遠洋漁業船を派遣して、現地の漁労会社と共に漁をし、ここ塩釜で水揚げ・加工をしていました。しかし200カイリ経済水域による漁獲規制により遠洋漁業ができなくなってしまい、水産加工業に舵を切ります。以来、これまで培ってきたネットワークを駆使し、安定した原料買付けを継続しています。

渡會のアラスカ産赤魚の国内シェアは約32%、年間約3000tを仕入れます(2023年)。

渡會には、アメリカの漁業会社各社へ日本から技術者を派遣して漁業の指導や漁船の改良など積極的な支援を行い、現地の漁業会社とパートナーシップを確立してきた歴史があります。「買付けは社員が現地へ赴き、産地や魚種、品質など細かく確認しています。仕入れ価格、マーケット状況や海水温などを考慮して最適なタイミングを見極めるのがとても難しく・・・。そんな中でも遠洋漁業をしていた頃からお付き合いのあるアメリカの船会社から、優先的に買付けをしています」と遠藤さん。

持続可能な漁業でSDGsに貢献

そんな「骨取り赤魚の煮付け(しょうゆ)」は、2015年発売以来、じわじわと人気が高まり、今や全国の生協で年間135万パック(2023年度日本生協連出荷実績)の利用がある人気商品に。そのうち、なんと約1/4がコープきんき会員生協組合員さんの利用となっています。

もともと関西では古くから煮付や粕漬などのお魚料理で”庶民の味”として親しまれてきた赤魚ですが、水揚量の激減により高級魚となってしまいました。そこで代用されるようになったのが輸入品の赤魚。当商品ではアメリカでもっともポピュラーなアラスカ産を使用。脂ののりがよく、調理後のホクホクした食感と鯛のような上品で淡泊な味わいが絶品です!

赤魚はアラスカメヌケという魚種で、アラスカ湾アリューシャン列島近海に生息しています。

「骨取り赤魚の煮付け(しょうゆ)」のパッケージにはMSC認証マークがついています。

SDGsにも配慮し、渡會で扱う赤魚はすべて、MSC(海洋管理協議会)認証を取得。MSC認証とは、持続可能な漁業を促進する国際的な認証制度のことです。
「とくにヨーロッパの方はMSC認証を取得した魚を好む傾向があり、東京オリンピックの際は、認証を取得した魚を求めてお問い合わせをいただきましたね」と遠藤さんが教えてくれました。

日本の職人技は海を越え世界へ

アメリカで水揚げされた赤魚はすぐさま頭と内臓を切除するなど一次加工を行い急速冷凍。中国とベトナムの加工場へと船で運ばれます。海外の加工場ではウロコ取り、三枚おろし、骨抜きなどの二次加工を行い、骨取り冷凍フィレが完成。その後、塩釜工場で煮魚に調理加工する流れとなります。

塩釜工場では、赤魚の冷凍フィレをじっくりと時間をかけて解凍するところからはじまります。

100年以上に渡りさまざまな魚種を加工してきた渡會が、その知識と技術を活かして挑んだのが「骨取り」でした。2006年から中国とベトナムで、日本の医療食・病院食向けに骨取り加工委託がスタート。そのノウハウが「骨取り赤魚の煮付け(しょうゆ)」にも大いに活きています。

「長年培ってきた日本の技術を担うことができる海外の委託先を探し、自社で作った生産工程や企画チェック表に基づいて、現地従業員の皆さんが確実に作業できるようにマニュアル化。何度も何度も足を運び、ともに品質を向上してきました」と遠藤さんは当時を振り返ります。もちろん、今も定期的な訪問によるコミュニケーションや指導は欠かしません。

鮮度を損なわないように骨取りが終わると直ちに凍結して鮮度を保ちます。

遠藤さん曰く、骨取り加工で重要なポイントは魚の構造をよく理解することと、入念に残骨チェックを行うこと。「研修ではまず目の前で魚を捌き、どこにどのように骨が入っているかをしっかりと学んでもらいます。また残骨のないように触手で確認するほか、下からライトを当てたり、X線検査をしたりと、最後まで手早くかつ丁寧に骨を取り除きます。」

塩釜工場ではタラやホッケ、カレイ、アナゴなどの加工を行う。

塩釜工場では社員のほか、ベトナム、ミャンマー、カンボジアからの技能実習生40名や留学生が製造を支えています。塩釜工場で働く技能実習生が帰国後、ベトナムの骨取り加工場のスタッフとして起用するケースもあるとのこと。「日本で習得した確かな技術と知識、そして渡會のことをよくわかってくれているスタッフが海外の現場にいてくれると心強いですね」と遠藤さん。

徹底的な温度管理が魚の本来のおいしさに直結

魚本来のおいしさ、つくりたてのおいしさを最大限に感じることができるのが冷凍商品のメリットです。そのためには、徹底した温度管理が重要。渡會は独自の冷凍保管技術をもち、さらには魚に最適な火入れ方法を熟知した、“温度管理”のプロフェッショナルでもあります。

パックに入った赤魚の切り身にタレを充填。その後火入れをします。

真空状態にしてからスチーム式高圧調理・殺菌装置で火入れをします。

とくに煮魚の調理においては、繊細な時間と温度管理がなによりも大切と話す遠藤さん。
「過加熱は魚のおいしさを台無しにしてしまいます。ふっくらと柔らかな身に仕上げるため、比較的低い温度75℃、4分(中心温度)で均一に加熱。その後、氷水でゆっくり粗熱を取りじっくりと味を染み込ませて冷まし、そこから冷蔵庫で一晩寝かせて、凍結します。最後は、ご家庭で加熱時間をしっかりと守ることで、作りたてのような味わいの煮魚をお召し上がりいただけます。」

毎日食べたくなる家庭の味を追求

一番苦労したのが味付け。赤魚の味を活かすことはもちろん、お子さんも毎日食べたくなる家庭の味わいを目指すため、新しい試みとして煮付けのタレを自社で開発。思い切って設備投資もしました。

4年前に導入した調理釜。撹拌しながら蒸気で加熱し、煮付け用のタレを作ります。

遠藤さんは、今の味付けにたどり着くまでに、さまざまな試行錯誤があったと振り返ります。プロの料理人からのアドバイスを受けたり、全国各地の生協さんご協力のもと、試作を何度も何度も繰り返したり・・・。結果としてコストはかかりますが、家庭で煮付けを作るときの調味料と調理方法がもっともおいしいという結論に達したそうです。

タレを10㎏ずつ袋に詰めて保存し、ゆっくりと冷まして味を落ち着かせていきます。

「例えば、さ・し・す・せ・そ・でお馴染みの基本調味料は、それぞれが持つ特性や役割があるので、火入れの順番を『さ→し→す→せ→そ』の正しい順に修正。その結果、角がとれて、マイルドな味わいになりました。製造工程においては一度に釜の中へ調味料を入れてしまう方が効率的なのですが、おいしさを最優先で。以来、お客さまから大変ご好評いただいております。」

このようにおいしさを磨いてきた「骨取り赤魚の煮付け(しょうゆ)」。組合員の皆さまから「夫も2歳の娘も大好き」、「おいしいタレが余るのがもったいなくて、最初から鍋に出して赤魚の切り身と野菜、キノコなどと一緒に煮てアレンジしている」など嬉しい声が届いています。

最後に遠藤さんはこう語ります。「こうしてたくさんの方々にアラスカ産赤魚のおいしさを知っていただき、これまでの苦労が実ったという達成感があります。これからも魚屋の使命としておいしい魚を仕入れて、より多くの方々に商品をお届けしたいと思っています。」

※商品情報・役職等は取材当時のものとなります。

編集後記

今回の取材を通じて、世界中の人が一丸となって安心安全な商品をわたしたちの食卓へ届けてくれていることが分かり、とても感動しました。感謝の気持ちでいっぱいです。来年の春には骨取り赤魚の新作が発表されるそうです。こちらもお楽しみに!

この記事をシェア

  • f
  • twitter
  • line

あわせて読みたい