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From 鳥取県大山町 JAとっとり西部のお仕事流儀

From 鳥取県大山町JAとっとり西部のお仕事流儀

名峰・大山が育む「おいしい蕾」

2024.07.11

「大山ブロッコリー」

※お取り扱いは生協によって異なります。


栄養価が高く、食卓やお弁当の彩りにも大活躍のブロッコリー。
中国地方の最高峰・大山を眺める鳥取県西部は、西日本一のブロッコリーの産地として知られています。
その歴史は古く、昭和46年に栽培をスタートしてから50年以上作り続けられてきました。
今回はボリューム感と詰まった甘みが人気の産直野菜「大山ブロッコリー」を求めて、鳥取県の大山町を訪れました。

INTERVIEW

「大山ブロッコリー」

伺ったのは5月中旬。初夏のブロッコリーは特に成長が早く、毎日収穫が行われています。

大山さまのお膝元ですくすくと

大山町を含む鳥取県西部地域に広がるのは、黒くてホクホクとした黒ボク土壌。黒ボク土とは、火山灰と腐敗した植物からなる有機質とが混ざり合ってできた栄養たっぷりの土のこと。阪神甲子園球場のグラウンドにも使われているほどその水はけの良さは折り紙付きで、湿気を嫌うブロッコリーを育てるにはぴったりの土壌です。また年間気温は約15℃、昼夜の寒暖の差もしっかりとあり、気候の面でもブロッコリーの生育にはうれしい環境。「大山ブロッコリー」は、まさにその名を冠するのにふさわしく、大山の恵みをたっぷり受けて育っているのです。

名峰・大山、地元の人から「大山さま」と呼ばれ、親しまれています。

土の色が黒いのは多くの有機物が含まれているから。

安全安心 食べ物を作る責任

「恵まれた自然環境に加えて、季節ごとに育てる品種を変えることで、安定出荷できる体制を整えています」と語るのはJAとっとり西部の竹中さん。1年を通して栽培を続けるからこそ、欠かせないのは連作障害への対策だと言います。ブロッコリー栽培の合間に他の作物を育てて連作を防いだり、根が深く張る植物の種を畑に植えて土の水はけを改善させるなど、さまざまな方法で土壌を守っているのだとか。

JAとっとり西部の竹中さん

さらに、栽培工程・衛生状況などをすべて記録に残して管理するJGAPの取り組みも進めています。生産者全180戸のうち、現在JGAP認証を受けているのは8戸。「コープさんの産直用には、JGAP認証を受けた生産者のブロッコリーを優先して卸しています」と竹中さん。組合員に対して安心できるものを届けるという、産直産地ならではの思いがにじみます。
生産者の手島さんは「食べ物を作るのにはいろいろと制約も多い。でも、体の中に入るものだからこそ、安全安心には自信をもって作っています」と語ってくれました。

生産者の手島さん

ギュッと詰まった蕾が鮮度の証

ブロッコリーは花蕾(からい)と呼ばれる蕾の集合体がメインの可食部。鮮度を保つためには蕾が開いてしまわないよう、できるだけ低温を維持する必要があります。
収穫は深夜から早朝の気温の低い時間のうちに行われ、生産者のつけるヘッドライトの光が点々と畑に灯る様子は収穫時期の風物詩。成長具合もまちまちなので、暗い中でも1つずつ目で確かめて、手作業で収穫しなければなりません。採れたてのブロッコリーは葉をむしる音や触感までもがフレッシュ。蕾がギュッと詰まって形はふっくら、一番良いタイミングで収穫した証です。

まるで小さな大山のような採り頃のブロッコリー。

花蕾の大きさと軸の長さで規格が決まるので、1つずつ採寸が必要。

おいしいものを、おいしいまま届けるために

収穫され箱詰めされたブロッコリーは、輸送中にもできるだけ鮮度を保てるよう予冷センターに持ち込まれ、真空予冷装置で急速に冷やされます。冷やすと言っても氷で冷やすのではなく、装置の中を真空状態にすることで水分を気化させ、深部からしっかりと冷やすのです。竹中さんによると「水分は気化されますが、箱の中に敷く袋のおかげで必要な水分は保たれて、鮮度が維持できるんです」とのこと。コープから組合員さんにお届けする時にもこの鮮度保持袋を使うことで、鮮度をキープしています。
「おいしいものをおいしく食べるには、早く食べてもらうのが一番」その言葉の通り、大山で早朝に採れたブロッコリーが夜には関西の市場に届くのだそう。産地との距離の近さも「大山ブロッコリー」の大きな魅力です。

真空予冷装置。しっかり冷やして鮮度を維持しているので、
おうちに届いてもなるべく早く冷蔵庫に入れるのがおすすめ。

危機脱出のキーワードは「差別化」

今では一大産地としての生産量を誇る大山町ですが、1991年からの約7年間は厳しい状況を迎えたことも。連作による病気の発生で生産率が下がり、またアメリカからの輸入品の増加も重なって、価格が低下、低迷期に陥ったのです。
この状況をなんとかしようと全国に先駆けて取り組んだのは、葉がついた状態のままでの出荷でした。「輸入品は葉がしなびているから葉を落とさないと出荷できない。きちんと管理して育てられた国産ブロッコリーだからこそ、葉付きのまま出荷できるんです」と竹中さんは語ります。
また、出荷の仕方も従来の縦詰めからよりコンパクトに詰められる横詰めに変更するなど、様々な工夫を重ねた結果、徐々に国産品の価値が見直され、ついには西日本ではトップクラスの産地面積に成長!輸入品との差別化を追求することでピンチを切り抜け、全国有数の産地となったのです。

葉付きといっても採ったまま、ではなく、きちんと残す葉を選定しているので手間がかかります。

令和5年度の作付面積は436.9ha。風通しをよくして病気の発生を防ぐため、株と株の間を広めに空けるのだそう。

「大山ブロッコリー」というブランドを育てる

今、JAとっとり西部で積極的に進めているのは、地理的表示保護制度や、地域団体商標など、地域とのつながりを保証する制度への「大山ブロッコリー」の登録です。
「鳥取県産ブロッコリー、ではなく「大山ブロッコリー」として知ってもらいたい」と語る竹中さん。そこに込められているのは、地域の中で育まれ根付いた野菜であることへの誇りと、それを次世代に繋いでいくという強い思い。
2026年に国の指定野菜に追加されることが決まっているブロッコリー。52年ぶりの追加に注目が集まる中、大山町では若手生産者への事業継承が進んでいるのだそう。後継者不足が叫ばれる昨今になんて頼もしい…!今後の産地の未来にどうぞご期待ください。

(左から)JAとっとり西部の竹村さん・竹中さん、生産者の手島さん、鳥取西部農協ブロッコリー部会の山本さん

※商品情報・役職等は取材当時のものとなります。

編集後記

栽培から出荷まで、随所に込められた細やかな配慮には、大きなピンチを乗り越えたからこその自信と自律が感じられました。ブロッコリーの花言葉の1つは「小さな幸せ」。小さな蕾がたくさん集まった様子からつけられたそうですが、産地の思いもギュッと詰まった大山ブロッコリーは、食卓にもおいしい幸せを運んでくれそうです。

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