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Productつくるひと つくるところ
「人」がわかると商品もわかる。コープの商品に携わる“中の人”をとおして想いを届けます。
From 岩手県株式会社アマタケのお仕事流儀
大切にしているのは、
良質であること。
岩手の自然に包まれて
健やかに育つ、国産合鴨
2024.10.31
株式会社アマタケ
岩手あい鴨鍋セット
※お取り扱いは生協によって異なります。
空気がキリッと冷たくなってくると、温かくてホッとする鍋が恋しくなります。コープでは、毎年さまざまな鍋セットをご用意していますが、ほかの肉に比べて普段なかなか食べる機会がない鴨肉を楽しめる「岩手あい鴨鍋セット」は、毎年リピートするご家庭も多い人気商品。鴨肉ならではのうま味はしっかりありながら、クセがなくあっさりしていると好評です。
今回は生協に30年以上おいしい鶏肉や鴨肉を提供し続ける、岩手県の株式会社アマタケに、そのおいしさの理由をお聞きしました。
INTERVIEW
「岩手あい鴨鍋セット」。
付属のだしのおいしさにも定評があります
親鴨は
イギリス・リンカンシャー州出身
自然の中で、飲み水と飼料に
こだわっています
「私たちが飼育しているあい鴨は、すべてイギリスのリンカンシャー州から導入する親鴨が産んだものです。日本人好みの、臭みがなくて肉が柔らかく、甘みも感じるチェリバレー種です」と教えてくれたのは、アマタケが岩手県の田野畑村に構える鴨農場で、飼育管理を担当する生産部長 熊谷知樹さん(トップ画像)。
アマタケでは毎年“親鴨”になるあい鴨をリンカンシャー州から導入して飼育し、親鴨が産んだ卵を孵化させて、ヒナを大切に育てた後、出荷します。
ちなみに、“あい鴨”とは、数千年も昔に真鴨が家畜化した「アヒル」のことであり、野生には存在しません(※)。
※アヒルと野生のマガモを掛け合わせた品種を指す場合もあります。
親鴨たち。イギリスからヒナの状態で導入し、
検疫舎で2週間隔離して感染症などがないか
確認ができたら鴨舎へ移動。
健やかで元気な親鴨に育てます。
(熊谷さん)
「あい鴨は比較的育てやすいですが、デリケートなところもあって、国内で扱っているところは多くはないんです。岩手県では、私たちだけですね。国内で飼育されているほとんどの品種が、同じチェリバレー種なので、他社さんのあい鴨と何が違うのかというと、環境と育て方になります。
特にこだわっているのは、飲み水と飼料。あい鴨は水鳥ですし、いつも新鮮な水がたっぷり飲める環境が必要。鴨農場がある田野畑村の山に流れる新鮮な沢水を引いて、飲み水にしています。
また飼料は、あい鴨専用の独自配合です。抗生物質・合成抗菌剤は使わず、あい鴨の腸内細菌を整えるために、納豆菌や酵素菌、香草菌などを配合しているんですよ。飼料の研究については、現在も継続的に進めています」
山間にある鴨舎の両側は大きな窓になっており、
太陽光や風が入る開放的な空間。
中央には飼料箱、右には水飲み場。
メスは、左の仕切りがある巣箱へ入り、
夜中から朝方にかけて卵を産みます。
(熊谷さん)
「親鴨たちは1坪につき8~9羽、1つの鴨舎に750羽、それが8棟あるので全体で6,000羽を飼育しています。毎日メスが卵を産んでくれますが、卵から孵化するタイミングは孵卵器などを調整し、週2回、決まった曜日に設定することで、徹底した管理を可能にしています」。
その後、子鴨たちは肥育舎に移動し、親鴨とほぼ同じ環境の中で育てます。
あい鴨たちが大きく羽ばたいても十分にスペースがある広さが確保されていて、柔らかいもみがらの上を自由に動き回ったり、ウトウトしたり、食事をしたりと、あい鴨たちがとても自由に過ごしている姿が印象的です。
交尾のためオスがメスの上に乗るので、どうしてもメスは汚れてしまうそうですが、「汚れが落ちると真っ白で、きれいですよ」と熊谷さん。
生産部長 熊谷知樹さん。
「坪あたりどのくらいの鴨数がいいのだろう」と、実験的に1坪当たりの数を減らしたことがありました。すると不思議なことに産卵個数は増えたものの、受精率が下がってしまった。
長年の試行錯誤でベストを見つけ出し、おいしいあい鴨のために、全国の同業者と情報共有しています」
また、鴨舎の床がコンクリートのままでは水かきを痛めてしまうので、クッション性のあるもみがらが敷き詰められています。「毎日汚れたもみがらをかき出しては、新しいもみがらを追加して清潔を保っています。下の方の汚れは自然に分解されるんですが、上に上にもみがらを入れていくので、1シーズンの後半は、床が高くなり、人が掃除に入るのも大変なんですよ」と山﨑さんは笑います。
これだけたくさんのあい鴨がいて、匂いがあまり気にならないのは、鴨舎が鴨にとっても快適な環境に整えられているから。しっかり運動して、ストレスなく過ごす日々が、おいしいあい鴨を育てているんですね。
北三陸のほど近くで、
疫病対策も万全な中
のびのびと育ちます
鴨農場がある田野畑村は、岩手県の中心地・盛岡駅から北東の方角、太平洋側に車で2時間ほど走ったエリア。リアス式海岸の入り組んだ断崖絶壁が有名な北三陸にほど近い位置ですが、台風などの塩害もなく、親鴨たちの故郷であるリンカンシャー州の気候にも似た自然環境になっています。
(熊谷さん)
「鳥インフルエンザなどが持ち込まれないように、徹底的に管理しています。敷地には、触れると30分以内にウイルスの感染性を消失させる消石灰を毎日撒いています。出入りする車にウイルスが付着している場合がありますから、敷地の入り口には浅いプールがあり、車はそこを通って中に入るとタイヤに消石灰が付着するようになっています」
さらに、ここの立地は渡り鳥のルートから外れていて、カラスも上空を飛ばない、と熊谷さん。元気なあい鴨を育てるには絶好の立地で、こだわりの飼料、環境の中、あい鴨たちはのびのびと過ごします。
親鴨たちが過ごす鴨舎。田野畑村の山間にあり、
周囲は主に栗の木で囲まれている。
近くには、かえったヒナを育てる肥育舎や、
元小学校を利用した加工場が建つ
丸々と育ったあい鴨の命を
余すところなくいただきます
生育50日を迎えたあい鴨は、車で5分ほど離れた場所にある加工場で解体され、ほぼすべての部位が、様々な商品へと加工されます。
「今回ご紹介する『岩手あい鴨鍋セット』には、ロース(ムネ肉)を2枚合わせ、中央にササミを入れてロール状にし、冷凍して棒状にしたら、スライスします。こうすることで、適度な脂がうま味を引き出すムネ肉と、しっかりとした歯応えがあるササミ、2種類の部位をお楽しみいただくことができるんです」と、田野畑事業本部長・細谷 弘さん。
細谷 弘さん。お湯に浸けた後の羽毛をダウンとして
出荷する際は、手作業で羽をむしるそう。
「熱いから誰もしない。私がするしかないんです」と
笑います。
「あい鴨鍋セットは、おかげさまで昨年11万パックを生協の組合員様にご購入いただきました。ご購入いただくほとんどが、関西や九州のご家庭です。まだ試したことがないという方も、これを機にぜひ鴨肉のおいしさを知っていただけたら嬉しいです」。
加工場では、まず屠殺して放血、その後60度のお湯に浸けて脱毛、さらに90度の二番湯に1秒つけて毛穴を開き、パラフィン(ろう)に浸けて固まったら、人の手でパラフィンをめくり取ることで、残った羽毛を除去します。
「それでも、水鳥の羽毛は抜けにくい。製造工程でもっとも気を遣う部分ですね。ここまでしてもまだ細かい羽毛は残っていますので、最後は1本1本ピンセットを使って取り除いています」。
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内臓を除去したのち冷水で冷ます
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1本ずつ取りこぼしなく羽を抜きます
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中国では珍味とされているアヒルの舌や、
ペットのエサ用に加工するアヒルの顔部分。
肛門周り以外は、ほぼ無駄なく活用 -
スタッフが鮮やかな手捌きで解体
(細谷さん)
「肛門と内臓を取り除いた後は、目視で病気の確認を行い、もし病気が疑わしい場合は、常駐している獣医師がその場で検査することになっています。解体は28人のスタッフで、1羽1分程度で行います。ずっと同じ場所を担当するのではなく、スタッフは全員オールラウンドプレイヤーの技術を身につけてもらうことで、自分の持ち場が終わったら他の人を助けに行き、結果、全員の作業を早く終えることができます」。
働きやすい環境で気持ちよく
自慢のあい鴨に最後の仕上げ
ロール状にして冷凍したら、大船渡市にある本社工場と、兵庫県の食品加工場へ搬送し、食べ応えがあって柔らかい、3.5ミリにスライスしてそれぞれの商品セットを完成し、冷凍ののち出荷作業へ。
本社工場で丁寧にスライスし、見栄え良くセット
本社工場で部長職に就く3人の方にもお話を聞きました。
「スライスする厚さを均一にするよう気をつけています。やはり形が整っていると見栄えも良いですし、今までより良いものを、という気持ちで取り組んでいます」と話すのは、品質管理部部長の山﨑 周さん。処理工程部の部長を務める箱石邦彦さんは「現場で作業しながら営業からのオーダーに応えるべく段取りする時に、やはりお客様のご要望に応えなくては、という気持ちが入りますね」とにっこり。
製品規格部部長の生形(おいかた)憲治さんは、「特に働いてくださるスタッフのみなさんの労働環境を整えることも、良い商品を作り続けるためには大事なこと」と、就労時間などに気を配っておられます。
左から生形憲治さん、山﨑周さん、箱石邦彦さん。
(山﨑さん)
「アマタケは、川上から川下まですべての加工に携わることができるので、消費者の方の声もよく聞こえてくるのが嬉しいです。いろんなことに挑戦する会社なので、ここで働いていることが楽しいですね」。
あい鴨の魅力を様々な商品でお届けしています。
セットに入っているつゆは、しっかりと肉のうま味を感じる鴨肉との相性は抜群で、
かつおと昆布でとった上品な味わい。
単体販売も切望されるほどなので、
ぜひお試しを。
(注:パッケージは写真と異なる場合があります)
※商品情報・役職等は取材当時のものとなります。
編集後記
親鴨を飼育するところから取り組む、株式会社アマタケさん。大自然に抱かれた岩手の地で、あい鴨たちのストレスフリーな飼育環境と、笑顔がこぼれるアマタケのみなさんの笑顔を拝見して、年々ファンを増やす「岩手あい鴨鍋」の魅力に納得。今年の冬は岩手のあい鴨を囲んで、心もお腹もあたたかいひと時を楽しみたいと思います。
田野畑村にほど近い北山崎。
海蝕洞窟が点在する約8kmの海岸線は
「海のアルプス」とも呼ばれる美しさ