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Productつくるひと つくるところ
「人」がわかると商品もわかる。コープの商品に携わる“中の人”をとおして想いを届けます。
From エクアドル田辺農園のお仕事流儀
日本とエクアドルに架かる
バナナの架け橋
2024.11.28
コープの田辺農園バナナ
※お取り扱いは生協によって異なります。
日本人に一番食べられている果物って何かご存知ですか?
正解は、そう、バナナ。果実の消費が減少する中でも、バナナは一定の需要があります。
コープで人気の「コープの田辺農園バナナ」が育つのは、日本から約15,000km離れた南米・エクアドル。今回はさんさんと降り注ぐ太陽の中、バナナを育てる田辺農園・田邊兄弟のお二人にお話を伺いました。
INTERVIEW
バナナは木に成っているように見えて、実は世界一大きい草の仲間。天に向かってのびのびと育っています。
日本からエクアドルへ、田邊兄弟のヒストリー
田辺農園は世界有数のバナナ輸出国であるエクアドルの標高約300mに、日本人の田邊正裕さんによって拓かれた農園です。1967年、16歳の時に家族でエクアドルに移住し、エクアドル大使館や商社での勤務を経て、父親のマニラ麻およびパーム園を継いだ正裕さん。当時起こったバナナブームを受け、1991年にバナナ農園の経営を開始しました。「でも農園を始めたころにはブームが終わっちゃって、お先真っ暗。どうしようかと思いました」と正裕さんは笑います。それでも低農薬バナナの栽培に取り組むなど地道に経営を続け、栽培面積も徐々に拡大。現在は弟の洋樹さんと共に栽培面積約350haの広大な農地でバナナを栽培しています。
バナナ畑?いいえ、バナナの「森」です
田辺農園がこだわるのは、できるだけ自然に近い環境での栽培。自然の地形をそのまま活かした木々が広がる農園は、バナナ畑というよりまるでバナナの「森」のよう。通常のバナナ畑では、除草剤をまき、踏み固められた土地にバナナが整然と並びますが、田辺農園の土壌には下草が生い茂ります。副社長の洋樹さんは「下草は雑草と栄養の取り合いになったりと、手入れに手間がかかります。でもその分保湿性に優れ、微生物の住処となるなど元気なバナナを育てるのには最高の環境なんです」と教えてくれました。下草が茂るバナナの森は、自然との共生を目指し、バナナも森の植物の1つという田辺農園の想いを体現する景色です。
バナナの栄養でバナナを育てる
田辺農園が特に力を入れているのが「土」づくり。化学肥料に頼ることなく、自園で堆肥を作り、有機質肥料をたっぷり含ませた土を作っています。その肥料に使われるのが、本来なら廃棄されてしまう規格外のバナナやバナナの葉。これらを発酵させて、栄養を土に還元しているのです。まさにバナナの栄養がバナナを育てる、田辺式「バナナ循環型農法」が行われています。
独自の手法でつくる肥料は全部で4種類。生育状況に応じて適切に使い分けます。
もうひとつ、こだわっているのは「水」。バナナの洗浄に使用されるのは地中深くから汲み上げた井戸水です。活性炭でろ過し、さらにオゾン殺菌を施された、「人が飲める」ほどきれいな水がたっぷりと使われています。
バナナの栄養ときれいな水、そして赤道直下の太陽の光をたっぷり浴びて育った田辺農園のバナナは、気品あふれる甘みとさっぱりとした後味が特徴です。
雨期と乾期があるエクアドル。
安定して水を供給できるよう、自然の水脈を活かした灌漑用のダムも造営しています。
バナナづくりは、未来の環境づくり
田辺農園にはバナナの森の他に、60haもの竹林が存在します。バナナ農園に竹林?と一見不思議に思えますが、実はこれも自然を生かした栽培には欠かせないもの。30~45kgくらいまで育つバナナの重さを支えるために、通常のバナナ畑ではプラスチック製のひもを使用しますが、田辺農園で使われるのは竹林で育てた竹の支柱。「森から不要な人工物は少しでも排除したい」との思いから、栽培方法の細部にまで配慮がいき届いてます。
今、農園が力を入れているのが再生林を植え育てる取り組みです。「“自然の中で育つバナナ”をコンセプトに栽培を行う中で、自然を守るだけでなく、動植物と共存できる環境を自分たちでも作っていけたら」と洋樹さんは語ります。
このように自然や野生動物との共生を目指す農園の取り組みは厳しい世界基準でも認められ、「グローバルギャップ」「レインフォレスト・アライアンス」の2つの国際認証を取得しています。
大切なのは「スタッフの一体感」
広大なバナナの森で働くスタッフは約500人。正規雇用のエクアドル人の皆さんです。
正裕さんの「おいしいバナナを育てるためには、作り手であるスタッフの思い入れが大切」の想いの元、スタッフの健康のために医務室を設置したり、社員食堂の整備、国の社会保障を適切に受けられるようフォローアップを行うなど、安心して働ける環境づくりにも注力しています。
毎年開催されるスポーツ大会など、スタッフ同士の絆を深める機会も充実。
コープと田辺農園の出会い
コープきんきと田辺農園のお付き合いが始まったのは、2011年。当時はフィリピン産のバナナが輸入の9割を占めていましたが、この頃干ばつや病害による耕作地の減少、さらに他国の買い付けが増加するなどで、取り扱いが困難に。しかし組合員からのニーズの高まりを受けて、コープきんきとしても「組合員においしいバナナを安心して食べてほしい」と新しい産地を探していました。自然環境を守り、持続可能な社会に繋がる取り組みを行う産地を探す中で出会ったのが「田辺農園」。自然と共存する栽培方法や働く人を大切にする理念が一致して、取り扱いがスタートしました。今ではエシカル消費への関心もより高まり、多くの組合員に指示される人気商品となっています。
おいしいタイミングを逃さずどうぞ
バナナの保存には15~20℃くらいの常温で風通しの良いところがおすすめ。シュガースポットと言われる黒い斑点がバナナの表面に表れたら、完全に熟して甘くなったサインです。待ち遠しい食べ頃ですが、房のバナナが一気に熟してお困りの場合は1本ずつ新聞紙に包んで、冷蔵庫の野菜室で保存を。バナナは温度変化に敏感なので、暑い時期は冷やして、寒い時期は常温で保存するとおいしく食べられます。
正裕さんは最後に「エクアドル現地で食べるバナナは格別においしい。このおいしさをどうすれば日本の組合員さんにそのまま届けられるか、日々考えています」と語ってくれました。
組合員に今よりもっと良いものを届けたい、そのあくなき向上心は、太陽に向かってググッと伸び育つバナナのように、留まるところを知りません。
(右から)田辺農園・農園主の田邊正裕(まさひろ)さん、副社長の洋樹(ひろき)さん
※商品情報・役職等は取材当時のものとなります。
編集後記
お話を伺う中で、田邊兄弟のお二人、農園で働くスタッフの皆さんが、自然を相手にしながらもまぶしい笑顔でいきいきとバナナを育てておられるのが印象的でした。ちなみにバナナの中で最も甘みが集中しているのは先端部分。手で持って皮をむいて食べるときにちょうど最後に食べる部分だそうです。エクアドルから届いた甘い架け橋、最後まで余すことなく楽しみたいですね。