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Productつくるひと つくるところ
「人」がわかると商品もわかる。コープの商品に携わる“中の人”をとおして想いを届けます。

From鳥取県株式会社ダイマツのお仕事流儀
便利さと繊細な味わいを両立。
冷凍食品の革新的技術が
生み出した、
ふっくら肉厚で深いうま味
2025.10.30
株式会社ダイマツ
「氷温甘塩さば切り身」
※お取り扱いは生協によって異なります。
INDEX
数ある生協商品の中でも、特に長年愛され続けている商品の一つ、「氷温甘塩さば切り身」。もはや説明不要の人気商品ですが、それでも繰り返し誰かに伝えたい魅力がギュッと詰まっています。
ひと切れずつ氷温冷凍されたさばは使い勝手が良く、ふっくら肉厚の身は焼いて器に盛り付けるだけで食欲をそそります。
口へ運べば、ほど良い脂と塩気、深いうま味が口の中で重層的な味わいとなって、しばらくその余韻に浸っていたくなるほど。何より驚かされるのが、その繊細な味わいが冷凍食品で体験できるということです。
その鍵となる“氷温製法”について、また作り手の想いを知るために、生産者である株式会社ダイマツ(以下、ダイマツ)へ足を運びました。
INTERVIEW

ただ焼くだけで食事のひと時を
幸せな気分にしてくれる、「氷温甘塩さば切り身」
先人の知恵から着想した技術を
日本で初めて事業化
鳥取県米子市から日本有数の漁港として知られる境港市にかけて日本海に突き出した弓ヶ浜半島。ダイマツはこの根元に位置する街・旗ヶ崎に、本社と工場を構えています。
「昔から、この辺りの地域では『寒(かん)の時期に作ったものは、よりおいしくなる』といわれていたんです。寒の時期というのは、大寒(1月21日)の前後1ヵ月間(1月6日〜2月4日)を指します。文字通り、一年中で一番寒い時期ですね。この時期に、干物やお味噌、しょうゆ、漬物などの仕込みをしたんです。先人の知恵ですね」。
そう教えてくれたのは、ダイマツの営業部長である西田良輔さん。
この山陰地方伝統の「寒仕込み」は、実際においしいままで長期保存がきき、健康に良いとされ、さらに腐らないという理にかなった技術です。
この技術に着目して科学的に分析し、いつでも安定して「寒仕込み」のおいしさを提供できるよう、1978年に日本で初めて“氷温製法”として事業化したのが、ダイマツでした。
氷温製法の仕組みについて、
ペットボトルやビーカーに入れた水を使って、
わかりやすく説明してくださいました
魚本来のうま味を逃さず
ドリップも出ない氷温製法
「氷温というのは、食品が凍る温度(氷結点)までの未凍結の温度帯のことなんです。魚の場合は0℃以下、マイナス2℃くらいまでの温度帯を指します。この温度帯では食品は凍らずに鮮度やうま味はそのまま保つことができるんですよ。
従来の冷凍・解凍では、うま味成分がドリップとなって流出しやすいのですが、氷温ではそれは防ぎ、魚本来のうま味を逃さず製品化できるのが大きな特徴です」。
そう言って西田さんが氷温庫から取り出したのは、水が入ったペットボトルとビーカーです。マイナス6℃に設定した庫内に一晩置いても、凍っていません。
「水は0℃で凍ると習いましたよね。でも実際は、不純物や衝撃がないと、0℃以下でも液体のまま凍りません。これが過冷却状態、要するに氷温の原理です。
この氷温庫は、衝撃や振動がまったくない状態にできるんですが、衝撃を与えるとどうなるか、見ていてください」。
そう言って西田さんがビーカーを振ると、中の水は一瞬でシャーベット状に変化しました。
「これは、衝撃が加わることで水の分子が結合し、一気に氷になったということです」。
つまり、「凍らせずに低温を保つ」ことで、魚の細胞は壊れず、うま味を含むドリップが出ることもなく、同時に微生物の繁殖は抑えられるので衛生的ということです。
さらに、酵素は緩やかに働くため、熟成が進み、うま味成分であるアミノ酸やイノシン酸が増加し、苦味系のアミノ酸は抑制され、おいしさが増すという仕組みです。
「『高鮮度保持効果』と『熟成効果』の相反する効果を同時に実現できることが、氷温の最大の特徴といえます」。
組合員さんからよく「さばの臭みが少ない」というお声をいただくという西田さん。
「うま味を逃すことなく製品化できるからなんです。一般的に、冷凍した状態で原料を仕入れて加工する場合は、一度常温以上の温度帯にして加工するんです。加工しやすさからなのですが、どうしてもその際に劣化してしまいます。弊社の場合は、氷温状態を終始一貫することで、劣化やドリップが出ないんです」。
ノルウェーで引き揚げられた丸々と脂の乗ったさば。
鮮度の良さがうかがえます
なぜ国産ではなく
ノルウェー産のさばなのか?
日本でも質の良いさばが獲れる漁港はあるけれど、なぜ北欧・ノルウェー産のさばなの? ――原料欄に目を通して、そう疑問に思った組合員も少なくないはず。
「使用しているノルウェー産のさばは、北極海に近い冷たい海で育つため、脂が多くのっているんです。国産だと脂分は大体8〜12%程度ですが、ノルウェー産は20%近くというものもあります。
また質が高く、管理されたきれいな海で未来の漁獲量もちゃんと考えられているので、安定しているという点も重要です。
ノルウェーでは、8月から10月にかけてが最もさばに脂がのる時期。その時期に一年分をまとめて買い付けています。漁獲後すぐに冷凍され、こちらに到着したら約3日かけて氷温でゆっくりじっくりと解凍し、細胞を壊さずにうま味を保持しています」と説明してくださったのは、技術管理顧問の羽山謹次さんです。
「温度管理が何より大切です。0.1℃の差で仕上がりが
変わります」と羽山さん
食べ物づくりは命づくり
組合員の食卓へお届けするまで
氷温でゆっくり解凍されたさばは、さらに塩水解凍し、内臓を取り、三枚おろしに。その後、塩水に漬け込み、氷温熟成庫で半日から1日程度熟成させて、うま味成分を増加させます。
「魚の冷凍食品」と聞くと、冷凍したさばを三枚おろしにして冷凍するだけというイメージを持ちやすいですが、実は繊細な温度管理のもと、特別な技術と人の手と目、時間をかけて食卓まで届けられることがわかります。
1940年の創業時から、受け継がれてきた「食べ物づくりは命づくり」という想いが今も大切にされているのだと感じます。
氷温解凍され、高鮮度のまま保たれているさば。
カチコチに凍っているのではなく、少し柔らかい状態
内臓を取り、三枚おろしに。同時に、皮が傷ついて
いないかなど見た目の確認も行われます
商品として形成し、トンネルフリーザーを通って
氷温から冷凍へ
人の目でしっかりとチェックし、切り身の大きさや
部位をバランスよく組み合わせてパッキングへ
パッキングできた商品は機械と人の手を使って
入念に検査し、出荷されます
今年で創業65年。取締役・松江一志さんは、力強く語ります。
「私たちは、『おいしくて健康によい食品をつくる』という理念のもと、こだわりの氷温製法で、多くの組合員のみなさまに喜ばれるような商品をこれからもお届けしてまいります。ぜひ氷温の技術で作ったさばを周りの方へもおすすめしていただければ嬉しいです」。
取締役・松江一志さん。
「シンプルに焼いていただくことが多いですが、
焼いたさばをサンドイッチにして
楽しむこともあります」
※商品情報・役職等は取材当時のものとなります。
編集後記
「氷温甘塩さば切り身」は、いつ食べてもひと口目の感動は変わりません。食文化としてすでに地域に根付いている「寒仕込み」に改めて着目し、「氷温製法」として事業化されたというお話には、「おいしくて、本当に体にいいものを」と探究された強い信念を感じました。冷凍食品にもたらされた革新的な技術のおかげで、わが家でもおいしい焼きさばを楽しませてもらっています。













